開業当初の新人の頭の中は、
これでいっぱいだと思います。
経営の安定は経営者にとって永遠の課題ですが、とりわけ新人にとっては切実な課題です。
「できるだけ早期に経営を安定させるために必要なことは何でしょうか?」
新人さんからこのような質問を受けることも多いです。
この質問に対する私なりの考えを述べるならば
「まず最初に、自分が実現するべき理念・ゴールを明確にすることだ」
と答えます。
「理念」といっても特別なことではありません。
誰しも必ず一度は考えていることです。
皆さんの活動の原点を明確にして欲しいと思います。
ではなぜ、経営を安定させるために理念を明確にする必要があるのでしょうか?
その理由は2つあります。
最近の新人さんからの相談内容には、
何かにつけて「効率的な方法・無駄のない方法を教えてください。」
という相談が多いです。
しかし、一体何が「効率的で無駄の無い方法」なのかの判断は一概にはできません。
なぜなら、達成すべき目的・実現すべき理念がひとりひとり違うからです。
逆に、誰にとっても最も非効率的で無駄の多い方法は明らかです。
それは自分にとってのゴールがコロコロ変わることです。
自分の生き方が「ぶれる」こと、それが全ての人に共通する一番の無駄です。
実現するべき理念がコロコロ変わったり、不明確であったりするならば、手段の妥当性・効率性などを議論している場合ではありません。
ゴールが明確になっている人間だけが、手段の妥当性・効率性を検討する資格があります。
経営は試行錯誤の繰り返しです。
PDCAサイクルを地道に繰り返すことです。
経営が早期に安定するかどうかは、結局、その地道な作業に耐えられるかどうかと思います。
早期に結果を出すためには、迷わないこと・集中することが重要です。
検証と修正の毎日にくじけないことです。
順調な日々だけではありません。
うまくいかない日々も絶対あります。
理念が明確だからこそ、その理念実現のための試行錯誤を乗り越えられます。
理念が明確だからこそ、理念を実現するための手段の妥当性・手段の効率性の検証に迷わずに集中できるのです。
私が「最初に理念を明確にしましょう」「理念が重要です」等と話しをすると、「それは単なる綺麗ごとじゃないですか?」という反応をされることがあります。
しかし、私は綺麗ごとで言っているのではありません。
行政書士事務所を経営していくためには、自分が開業する際の原点ともいうべき「理念」・「お金を稼ぐことよりも大切な何か」が極めて重要になると私は思っています。
このような理念が明確でなければ、経営の安定には容易に到達できないと思っています。
なぜなら、お金を稼ぐこと・生活の糧を得ることが至上の目的であれば、そもそも行政書士のような非効率的なビジネスはやらない方が合理的だからです。
行政書士に限らず言えることですが、士業の仕事は労働集約型な上に、国家資格者として様々な義務・責任が課せられます。
国家資格者を騙して悪事を働こうとする輩も近づいてきます。
下手をすれば業務停止等の懲戒処分や刑事罰が科せられるリスクもあります。
依頼者から損害賠償請求されたり、恨まれて事務所に放火されたりすることがあるかもしれません。
諸法令の改正によって本人確認の義務なども追加で課せられて手間もかかります。
だからといって、その手間をストレートに報酬に転嫁できるわけでもありません。
単純な損得勘定だけで考えれば、こんな縛りの多い手間のかかる業種で起業・開業するのは賢い選択ではありません。
ちなみに、単純な損得勘定だけで考えると一般的に儲かりやすい業種は「グレーな業種」です。
許認可が必要そうにみえて、許認可が不要なグレーゾーンな業種が一番儲かります。
あんな分野は規制するべきだ!と思われていそうでも、まだ規制されてない、ペナルティを受けにくい業種。
だからこそ、
「先生、これって許可いらないよね?」
「許可を取らなくても何とかやり過ごせる方法(業態)はないですか?」
みたいな質問を受けることが行政書士は少なくないわけです。
とりあえず生活の糧を得ることが目的であれば、別にグレーな業種に手を伸ばさなくても、私の大学生時代と同じように警備員のアルバイトで十分です。
社会には多様なビジネスが存在します。
行政書士をやるよりも、もっと気楽にお金が稼げる手段は世の中にいくらでも存在します。
生活の糧を得るためであれば、他の手段がいくらでもあります。
お金を稼ぐことが至上の目的だと、行政書士という職業を選択する必然的な理由がありません。
「お金を稼ぐことよりも大切な何か」が自分の心の中にあるからこそ、それを実現するために不可欠だからこそ、行政書士を選択するという発想が自然です。
「行政書士としての活動を通じて社会に貢献したいから」という理由以外で行政書士を選択する合理的な理由はないと思います。 それ以外の理由なら、他の代替的な選択肢がいくらでもあるからです。
だからこそ、お金を稼ぐことが至上の目的で行政書士を開業した新人は、短期間で行政書士であることを辞めます。
「お金を効率的に稼ぐ」というゴールに到達するための手段としては、行政書士は非効率的であり、手段としての妥当性を欠く。
容易にこういう結論に到達します。
理念が欠如した行政書士事務所の経営は踏ん張りがききません。
経営は地道なPDCAサイクルを繰り返しです。理念が無い開業者は地道な試行錯誤に耐えられません。
「もっと楽にお金が稼げる手段があるのではないか?」等とすぐに他のことに目移りします。
例えば、開業して間もないうちから、すぐに行政書士の実務を放棄し、新人行政書士を対象にしたインチキ開業セミナービジネスに走ったりします。
新人行政書士を対象にした様々な開業ビジネスは私が開業したころから既に盛んでしたが、私が開業した当時は、それなりに経験のある先生が新人に対して意味のある指導していたように思います。
ところが最近は、まともに行政書士をやっていないようなヒヨコ行政書士が、さらに小さいヒヨコ・タマゴを餌食にするという呆れ果てるほど悲惨な状況が一部で見受けられます。
せっかく行政書士として開業したのに、新人や開業予備軍をカモにしたインチキ開業セミナーを開催することが本業になったのでは意味がありません。
行政書士として熱意を持って実務をやる気が無いのに、開業セミナーを開催する建前上、「実務を一生懸命やっている行政書士のフリ」をすることが本業になったのでは意味がありません。
これでは行政書士登録をしているだけの単なる詐欺師でしょう。こういう誤った道に走ってしまった新人さんは、ある意味では可哀そうな存在です。
行政書士として活躍したかったけど、活躍できなかった新人の成れの果て。
理念が欠如していたが故に踏ん張りきれなかった新人の成れの果て。
そう考えれば、インチキ開業ビジネスに身を堕してしまった新人は、非常に哀れな存在とも言えます。
これから開業する皆さんが同じ過ちを犯さないためには、行政書士としての理念を最初に明らかにしておきましょう。
その理念が、開業スタートから経営を安定させるまでに降りかかる様々な困難を乗り越えるための支えとなります。
なお、自分なりの理念を明確にした後に、専門特化して選ばれる行政書士になるための方法については下記を参考にしてください。
24歳で開業。現在11年目に突入。開業3ヶ月目で売上100万円突破。2年目に事務所を法人化。月商700万円超。売上倍増の軌跡と、「金ナシ、コネナシ、実務経験ナシ」の弱者でも成功できる行政書士開業ノウハウを、余すことなく無料で公開中。メールマガジン購読者限定の特典もあります。→ご登録はこちら
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